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ビルを警備する半自動の遠隔操作ロボット。Mira Roboticsと大成が共同開発

 総合ビルメンテナンス事業の大成株式会社は、アバター(遠隔操作)ロボットの開発を手がけるスタートアップMira Robotics(ミラロボティクス)株式会社と資本業務提携したと発表し、2020年2月21日に東京・品川で記者会見を開いた。ロボットを活用した警備ソリューションを共同で開発し、今秋から事業展開する。

自律と遠隔操作を組み合わせた「ugo」

Mira Robotics「ugo」

 Mira Robotics は2018年に創業。アバターロボット「ugo(ユーゴー)」を開発しているスタートアップだ。「ugo」は2本腕を持つ上半身型の移動ロボット。本体高さ104cm。最大高さは165cm。胴体部は上下に昇降することで、30cm程度の低い位置にあるものも、160cm程度の高い位置のものにも手が届く。片腕荷重は約1kg。自律移動機能に加えて遠隔操作することで、たとえばエレベーターの操作ボタンを押したり、施錠されているかどうか確認するような作業ができる。

本体高さ104cm。台車部の幅は36cm
側面
昇降機能を持つ

 足回りにはメカナムホイールを搭載し、左右や斜めにも自在に移動できる。連続稼働時間は4時間。移動に加えて作業ができる点を売りとしている。そのほか、マイクやスピーカーも搭載している。また学習機能があり、定型作業を切り出して自動化することができる。

遠隔操作と自律動作を組み合わせた警備が可能
定型動作の切り出しと自動化が可能

 大成はビルの総合管理サービス会社で60年の実績を持っている一方、新しいことにチャレンジしようという気持ちが強い会社だという。そのため話はどんどん進み、大成とMira Roboticsとの出会いは2019年8月末だったが、その後10月に実証実験の提案が行なわれ、そして大成が警備業務を担う品川シーズンテラスで2019年11月から12月にかけてフロアの巡回警備と立哨警備の実証実験を行なって効果を検証した。

 実験の結果、省力化効果、ほかの業務の品質向上、警備員とロボットの役割分担のありかたなどの一定の効果と継続開発の方向性が確認できたことから、今回の資本業務提携にいたったという。入居テナントからの反応も、話しかけたり、一緒に写真を撮るなど、好評だったという。

実証実験の結果を踏まえて新型ロボットを開発

新型ugoを紹介するMira Robotics株式会社 CEO 松井健氏

 一方、ロボットの速度が遅い、衝突の危険性、暗い場所だと映像がわかりにくい、人の五感(嗅覚・聴覚)などの重要性などが実証実験で改めて確認された。そこで新たにビルメンテナンス仕様版「ugo」を開発。今回、初お披露目となった。

実証実験での課題

 設計を一から見直すことで、実証実験版は75kgだった重量を50kgまで軽量化。昇降機能を持つ本体だけでなく、台車部分を設計しなおすことで、足回りを個室トイレにも入れるくらいまで幅36cmとコンパクトにし、移動速度を1.5kmから4km/hと向上させた。

 また2次元LiDAR(レーザーセンサー)を台車部に搭載し、SLAM(自己位置推定とマップの同時作成技術)による自律移動機能による自律巡回を行なえるようになった。俯瞰カメラにも夜間警備用のLED照明をつけ、電気のついていない館内でも巡回して写真を撮れるようにした。

俯瞰カメラには夜間警備用の照明も装備

 本体台車部にも衝突検知センサーをつけて、出会い頭での安全性を高めた。またカメラからの映像情報だけでは警備用途には不十分であることがわかったため、環境センサーをつけた。音、温度、湿度、CO2量、ガスのセンサーを内蔵している。

 これによって、「水の出しっ放し」などを音で簡単に検知できるようになった。通常データに対して異常値を検出するとアラートを出すことで、人間の警備員が駆けつけるという運用形態になる。

台車部センサーで障害物を検知

 Mira Robotics株式会社 CEOの松井健氏は、新たに「品川シーズンテラス」ではじめた2回目の実証実験(3月なかばまでの予定)を踏まえて「今後はファーストカスタマーを募集し、事業化サービスを進めていき、2020年秋に警備ソリューションを提供していきたい」と語った。実証実験では、シフトに合わせた動きができるのかといったところをさらに詰めていくとのこと。

ロボット2台で1人分の仕事を代替

警備業界の人手不足は深刻

 生産労働人口は今後20年間で1,428万人減少する。これは毎月59,000人が減少することに相当する。警備/清掃では83%の企業が人手不足に悩んでいる。つまりこれから働き手はどんどん減少し、採用競争は激化し、人件費は上がる。だがビルがあるかぎり、警備・清掃の仕事はなくならない。

大成株式会社 代表取締役専務 加藤憲博氏

 大成株式会社 代表取締役専務 加藤憲博氏は、警備員スタッフは有効求人倍率がすでに7.46倍になっていると人手不足の深刻化を紹介した。これまでのセキュリティはすべて人が行なっていたが、それをロボットで一部補うことを考えている。なおコストでみると警備員1人分のコストで「ugo」を四台導入できるが、実証実験を踏まえて、「ugo」2体で警備員1人を代替することを狙っていると語った。

警備コスト半減が狙い

 ロボットのほかドローン、IoT機器を使って省力化を進めると同時に、テクノロジのプラットフォーム化を考えており、その1つ目が今回の「ugo」だという。

普段は警備室から遠隔操作を行なっている