大成は7月15日、品川シーズンテラスにて、アバター警備ロボット「ugo(ユーゴー) TS シリーズ」を活用した、「DX(デジタルトランスフォーメーション)警備ソリューション」の運用を開始すると発表し、記者会見を開いた。同シリーズは自動で立哨警備と巡回警備が可能であり、同社は警備業界の人手不足の解消を狙う。

  • 「ugo TS シリーズ」

「ugo」は自立移動機能と2本のアームを備えているアバターロボットである。搭載したAIの学習機能による自律的な操作と、警備員による遠隔からの操作の双方に対応している。「ugo TSシリーズ」は、同社が提供する警備業務を一元管理できる情報プラットフォーム「T-Spider(ティースパイダー)」と連携しており、セキュリティの向上と警備の負荷低減に特化している。

また、同シリーズはフロア情報をあらかじめ入力しておくことで、巡回による警備を自動で行い、警備員はその様子を遠隔でモニタリングできる。マイクとスピーカーを介した人とコミュニケーションをとるほか、緊急時の対応は警備員が行うなど、ロボットと警備員のそれぞれの特性を生かしたハイブリッドな警備が可能になるとのことだ。

  • 警備員と並ぶ「ugo TS シリーズ」。敬礼のポーズもとることが可能

厚生労働省の発表によると、日本の労働人口は年々減少しており、2019年以降の20年間で1400万人以上の就業者が減るという。特に、警備業界における有効求人倍率は依然として停滞傾向であり、5.13倍と深刻な状況である。

一方で、ビル管理法によって警備業務は現地での対応が必須であり、警備をはじめとして清掃や設備の施設管理は施設管理を停止できず、テレワークの導入が困難となっている。採用競争の激化による人件費の上昇も見込まれており、将来的には、業界全体の業務品質の低下や成長機会の損失につながると懸念されている。

こうした背景を受けて同社は、警備業務に警備ロボットを導入するに至ったとのことだ。運用の開始に先駆けて品川シーズンテラスで実施した先行導入では、2台の「ugo TS シリーズ」が自動警備を行った。ロボットの稼働を前提にしたシフトの組み換えや、立哨警備と深夜の巡回警備をロボットが担うことで、結果的に警備員4名の削減に成功している。

  • 巡回警備中はディスプレイが変化する

「T-Spider」は、これまで紙での報告が主であった日報や月報などの報告書をオンライン化し、デジタル管理するプラットフォームである。同システムを活用することで、データを活用した分析が可能となり、ビル管理会社、警備会社本部、防災センターの3者間で情報を共有し、より効率的な管理運営につながるとのこと。

さらに、「ugo TS シリーズ」のカメラ映像は同システムに連携できるため、従来は目視で行われていた備品の確認状況を電子データで保存できるようになる。同社は、この機能を利用することで、ドアの開閉や消火器の位置などの記録を画像データで保存できるため、警備業務の質の向上を実現するとしている。

同シリーズの最大の特徴は、エレベーターを利用したフロア移動が自動で行える点であろう。また、警備員がカメラ映像を確認しながら階数を指定することもできる。ロボットに備えたアームを利用してボタンを押せるので、エレベーターにセンサーを装備するなどの改修工事は不要である。

  • エレベーターのボタンを自分で押して別フロアへ移動する

エレベーターにあらかじめ人が乗っている場合には、警備員がスピーカーを通して声をかけるか、または次の便を待つなど、臨機応変な対応が可能である。さらに、左手アームにはカードキーを搭載できるので、セキュリティカードがないと移動できないセキュリティエリアの巡回警備にも対応している。

  • 左手にはセキュリティカードが搭載されており、カードがないと入れないフロアにも移動できる

現在はまだ試作機による実証段階だが、2021年9月からは量産機の販売が予定されている。同社の代表取締役副社長 加藤憲博氏は会見の中で「ugoを活用した警備業務において、人とロボットが協働することで、付加価値が生まれるはず。さらに、お客様の管理コストを低減して業務の品質の維持も実現する」とコメントし、量産機の販売を前に、多くの企業からの問い合わせを待っていると述べた。

  • 大成 代表取締役副社長 加藤憲博氏

同シリーズの導入にあたり初期費用やエレベーター連携費用は不要。ランニング費用として月額18万5000円から導入可能だ。