ビル管理を手がける大成は、アームを搭載した警備ロボットを「第6回スマートビルディングEXPO」(開催期間:2021年12月6~8日)に出展した。アームでエレベーターの階数ボタンを押せるため、ロボットが建物内を自由にフロア移動できる。「配達機能を搭載してほしいという声が多いため、改良を進めている」と同社担当者は打ち明けた(動画1)。

動画1 大成とユーゴーが共同開発した「ugo TSシリーズ」(音声なし)
建物に導入する際は、あらかじめエレベーターのボタン位置を記録し、「ボタンを押すまでに時間がかからないようにしている」(大成)という。(撮影:日経クロステック)

 大成が出展した「ugo TSシリーズ」は、ロボット系スタートアップのugo(ユーゴー、東京・千代田)と共同開発した警備ロボットだ。同製品を活用した警備システムの提供を21年11月に開始した。警備員が遠隔操作したり、自律移動したりできるため、監視体制の強化や人手不足解消につながる。大型複合ビル「品川シーズンテラス」(東京・港)でも本格運用中という。

 これまで警備ロボットや掃除ロボットがエレベーターを使うためには、呼び出しや行き先階の登録を代行するIoTプラットフォームなどを建物に導入する必要があった。IoTプラットフォームの導入コストが人件費の削減効果を上回ってしまう場合が多く、普及の障壁となっていた。

 ugo TSシリーズは、特殊な設備が導入されていないビルでもエレベーターを使ってフロア移動できる。昇降装置で高さ調整できるアームを搭載したため、呼び出しボタンや階数ボタンを押せるからだ。自律移動でボタンを押すには画像認識などが必要だが、フロア移動時は遠隔操作に限定することで開発の手間を省いた(図1)。

図1 アームに付けた突起でボタンを押す
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図1 アームに付けた突起でボタンを押す
アームを搭載した警備ロボであるため、建物に特殊な設備を導入しないでもエレベーターの乗り降りができる。「エレベーターのボタンを、アームを使って押せる警備ロボは他に類を見ない」(大成の担当者)という。(出所:大成)

 ugo TSシリーズの外形寸法は高さ180×幅44×奥行き58cmで、質量は約54kg。連続稼働時間は約4時間で、充電時間は満充電まで約1.5時間かかる。最大移動速度は2.5km/h。遠隔操作は4G/LTEや5G、無線LANで通信する。センシング用に、2D LiDAR(2次元レーザーレーダー)や深度カメラ、超音波センサーなどを搭載した。

 両社は同ロボットの導入を促進するため、「月額約20万円」(大成)という低価格で提供する。「現状、問い合わせは多数ある。遠隔操作が中心になるため、まず共同で実証実験して導入を検討してもらっている」と同社担当者は述べた。

 導入を検討する企業の要望から、ロボットの改良点も見えてきた。配達機能の搭載だ。物の配達や館内での受け渡しなどでニーズを見込む。現状搭載するアームでは「持てるのは紙数枚ぐらい」(大成)と非力だ。「まだ提供できる段階ではないが、ハードウエアとソフトウエアの両面から開発を進めている」(ユーゴー)という。