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ugoの〝賢い〟点検ロボ エレベーターで自在にフロア移動

東京都内の工場に並ぶ出荷前の「ugoプロ」(ugo提供)
東京都内の工場に並ぶ出荷前の「ugoプロ」(ugo提供)

ロボットを活用して業務を効率化する動きが広まる中、エレベーターでの移動ができる〝賢い〟点検ロボットが注目を集めている。開発したのはugo(ユーゴー、東京都千代田区)で、人間の腕のようなアームで自らエレベーターのボタンを押してフロアを移動する。社名と同じ名称のロボットは、開発から製造まで一貫して自社で手掛け、月額10万円台から使用可能にした。ロボットとの共存を急ぐ企業の現場など約100拠点で活躍する。

ugoは、少子高齢化でロボットによる仕事の置き換え需要が高まるのをにらみ、「人とロボットの融合」を目指して平成30年に設立された。松井健代表取締役CEO(最高経営責任者)を中心に大手電機メーカー出身の技術者らが集まった、ものづくり系のスタートアップ(新興企業)だ。ロボットが得意とする点検や警備分野は、長時間歩き回る必要があるなど、肉体的負担が重い。夜間の作業も多く人員確保が難しく、導入機運が高い。

3種類あるロボットのうち、主力の最上位「ugoプロ」には2本のアームがある。アームにエレベーター移動を可能にした「UEOSU(ウエオス)」機能が備わる。同機能は、ボタンを識別する画像認識技術と技術陣が改良を重ねて実現した独自のアーム制御技術で構成される。他社製ロボットだと、エレベーターのボタンを変更するなど、何かしらの改修が必要になるが、ugoプロなら現行のまま1台で複数階を見回ることができるという。

独自のアーム制御技術でエレベーターのボタンを押すことを可能にした=名古屋市東区のアーバンネット名古屋ビル(ugo提供)
独自のアーム制御技術でエレベーターのボタンを押すことを可能にした=名古屋市東区のアーバンネット名古屋ビル(ugo提供)

移動も衛星利用測位システム(GPS)の位置情報を頼らない。建物内では精度が落ちるためで、「SLAM(スラム)」と呼ばれるカメラやセンサーを用いて自分がいる場所の推定と周辺の空間把握を同時に行う技術を活用する。この技術を組み込み、煩雑なレイアウトの場所でもロボット自身が自分の位置を認識して移動できる。

高さは約180センチと成人男性と比べても大きいが、威圧感を与えないように、笑顔など表情を表示できる「顔ディスプレー」が搭載されている。音声発生機能と合わせて使えば簡単なあいさつも可能だ。

開発・製造は東京都内の自社工場で行い、高品質と低コストの両立を図る。機能を絞り、部品選定も自ら行う。初期導入費用が1台につき数百万円に上るような他社製ロボットとは一線を画す。導入時も顧客側は条件設定の入力だけですむよう簡単にした。プログラミング技術は一切不要だ。

これまで約100拠点で100台ほど導入した。工場、プラントの点検以外にもデータセンター(DC)や火力発電所など機密性が高い施設でも採用された。

NTTデータは4月に東京都内のデータセンターにugoプロを本格導入。順次全国に広げる=東京都港区(同社提供)
NTTデータは4月に東京都内のデータセンターにugoプロを本格導入。順次全国に広げる=東京都港区(同社提供)

NTTデータは、DCへの試験導入で設備管理担当者の毎日の点検時間を半減できたことから、全国15のDCに順次導入することを決めた。同社法人コンサルティング&マーケティング事業部の奥村友佳課長代理は「将来的には担当者による点検時間を8割減らす。人とロボットとの役割分担を明確にして人材難に対応していきたい」と話す。

松井氏は「労働人口が減る中で労働力を維持するには、任せられる分野にロボットをどんどん導入していくしかない」と強調する。導入先の大半は点検や警備分野だが、最近では介護分野にも進出する。マンション住民の生活を手助けする管理人「コンシェルジュ」も担えそうだという。活躍シーンは広まりつつある。自社生産を強みに令和9年までに1万台の導入を目指す。社会を支える新たな〝インフラ〟になろうとしている。(佐藤克史)

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