業務DX(デジタルトランスフォーメーション)化を進める企業担当の方々にとって、実際に導入している事例はとても参考になります。今回は阿蘇くまもと空港を運営する熊本国際空港株式会社様の実際のugo導入事例を、導入現場のご担当者と、ugoメンバーによるインタビューを交えてご紹介していきます。
目次
熊本国際空港株式会社 ugo導入概要
- ugo導入先:阿蘇くまもと空港
- ugo導入台数:1台
- 稼働開始:2024年2月~
Q. (ugoメンバー)阿蘇くまもと空港の特徴を教えてください。
阿蘇くまもと空港は熊本地震からの“創造的復興”のシンボルとされ、新しい旅客ターミナルビルが2023年3月にオープンしました。熊本地震の教訓から“安全・安心”の確保を第一とし、短期間に繰り返す大地震にも耐えうる構造です。外観のイメージは熊本城、飛行機のスケジュールを伝える情報端末「FIS(フライトインフォメーションシステム)」にくまモン登場など、随所に熊本らしさを感じられます。
最大の特徴は、国内線・国際線のいずれの旅客も利用できる“内際一体型”の搭乗待合エリアです。店舗面積は従来の46倍の規模となる約2,500㎡で、熊本のグルメや土産物を取りそろえた25店が並んでいます。保安検査場の先にこれだけ広い滞在型のスペースを設け、国内線・国際線の旅客が共用する搭乗待合エリアを運用している例は珍しく、全国から視察が相次いでいます。
建て直しにより、最先端の機器を採用することもできました。地方空港として初めて導入したスマートレーンは一度に複数人が利用でき、バッグからパソコンなどの精密機器を取り出さずに済みます。セルフチェックイン機やセルフバゲージドロップ(自動手荷物預け機)もあります。
阿蘇くまもと空港は台湾積体電路製造(TSMC)の工場に近い立地で、関連産業の熊本進出も相次ぐ中、今後ますます国内外の方々の利用が増えていくとみています。私たちは「訪れる人も、働く人も、笑顔になれる、世界でいちばん居心地のいい空港」をビジョンに掲げ、熊本の経済発展に貢献する空港運営に職員一丸となって取り組んでいます。
Q. 空港運営で熊本国際空港様が担っている主な業務を教えてください。
熊本国際空港株式会社は2020年4月から、「阿蘇くまもと空港」の航空管制を除く運営業務を行っています。これは国が滑走路など空港施設の所有権を持ったまま、民間企業に長期間の運営権を与える「コンセッション」という事業の形です。民間ならではの発想や工夫を取り入れながら、滑走路・ターミナルビル・駐車場の一体的な運営を担っています。
「訪れる人も、働く人も、笑顔になれる、世界でいちばん居心地のいい空港」という将来像を実現するため、私たちは重点的に取り組むべき課題として「安全・安心な空港運営の実現」「地域社会の創造的復興への貢献」「環境への配慮」「すべての働く人が活躍・成長できる環境の整備」を認識しています。さらに七つの行動指針も定めています。
Q. ロボットの活用を検討された背景を教えてください
まずは、持続可能な空港の事業運営を達成するためです。年々労務単価が上がり、採用は困難な状況になっており、今後の労働人口の減少に対して、備え始めなければならない時期にきていると考えています。
人材不足は地方においてより顕著です。将来的に旅客ターミナルビルの増床も検討している中、それに合わせて有人対応を増やしていくというのは現実的ではありません。そのような課題に対して、人だけに頼らない業務効率化も図るため、ロボットを含む様々なソリューションを検討しています。
また、阿蘇くまもと空港は2016年4月に発生した熊本地震からの創造的復興のシンボルとしての位置づけもあり、エアターミナルの整備は増築や改築が一般的な中、全館建て直しを行ったということもあり、建屋のリニューアルだけでなく、最先端のテクノロジーが活用された先進的な空港として業界内外にアピールしていきたいと考えました。
阿蘇くまもと空港ではugoの他にも、巡回清掃ロボットやスマートレーン*など最新の業務ソリューションが導入されています。
*スマートレーン:複数のお客さまが同時に保安検査レーンを利用できるため、待ち時間が少なく、快適な移動を実現します。また、高度化された保安検査装置を使用しているため、事前にノートパソコンやペットボトルなどの液体物を取り出す必要もありません。
Q. ロボットを検討される中で、 ugoを導入した理由や決め手は何でしたか?
他社のロボットも見ましたが、ugoの多機能な点がよかったです。表情や腕があり、多言語対応が可能なので、保安業務だけでなく案内業務にも使えると思いました。あとはロボットのデザインですね。人型であることには多くのメリットがあり、サイズも相まって人と同じ存在感があるので、親しみやすくかつ保安上の抑止力にもなると考えました。また、導入しやすい価格帯であることも魅力的でした。
Q. 導入に向けてプロジェクトを進める際に、障壁となったものはありますか?
もちろんugoが使える場所、使えない場所があります。例えば手動ドアの開閉はugoだけではできません。しかし、ugo社の皆さんと協議しながら運用でカバーすることにしました。社内から若干ではありますが、ロボットに対してネガティブな意見もありました。しかし、弊社の行動指針の中にある「アイディアは誰が出してもいい」「変わることを楽しもう」の精神でコミュニケーションを重ね、最終的には現場からも同意を得ることができました。
Q. 現在ugoをどのように活用されていますか?
主に国際線の保安検査場や到着ゲートでの立哨および案内業務に使っています。阿蘇くまもと空港は国際線の便数が増え、海外からの観光客が増加しています。韓国、中国、台湾からの観光客です。国際線の保安検査は国内線よりも基準が厳しく、スムーズな検査のために利用者の方々に協力してもらう必要があります。例えば、事前にパスポートや液体物を取り出しておいてもらうことなどです。母国語による案内が十分に伝わらず、利用者が多い時は保安検査場前が混雑することが課題でした。到着ゲートにおいても、お客さまが出口付近で立ち止まり、長蛇の列ができることもしばしば発生していました。対策として、保安警備員を立たせつつ、スピーカーで多言語アナウンスを流していましたが、あまり効果はありませんでした。そこをugoに変えて、内蔵のセンサーで人を検出したらアナウンスを流すといった運用に変えました。すると、予想どおりugoのアナウンスは皆がよく聞いてくれ、大幅に混雑が解消されました。また、貴重な人員リソースを巡回などの他業務に充てられるので、保安業務全体の効率化が実現できています。
Q. 現場での反応はいかがですか?
現場では新入りの後輩的な存在でとてもかわいがられています。最新のテクノロジーに触れることやugoを使いこなせることを皆が楽しんでいます。また、ugoを介して空港を利用するお客さまとコミュニケーションを取れるのがうれしいといった声も多いです。Face to Faceだと緊張等もあり、積極的なコミュニケーションが取れなかったり、不愛想な対応になったりしがちなのですが、ugoを介すると緊張を感じることも少なく、お客さまもマスコットキャラクターへ話しかけるような反応をして頂けるので、現場のモチベーションアップにもつながっています。
Q. 運用をする上で工夫されていることはありますか?
まず、単純に人の業務をugoに置き換えるのではなく、協業によって全体を効率化するという考え方が重要だと考えています。ugoにできること・得意なことはugoが、人がやった方がいいことは人が担当します。実際に、ugoも含めたシフト表を作成しています。
細かい点としては、保安検査場にて韓国語で案内する場合はどのFlow*を再生すればよいか誰が見ても分かるようにしています。また、ugoを管理するパソコンにスピーカーマイクを接続することで、ugo自身の発話が聞こえるようにしています。立哨や案内業務中のugoが発話する=人を検知しているということなので、オペレーターは常時モニタリングする必要はなく、発話した時だけ注意を向ければ良いので効率的です。
このほか、より自然な発話となるように、文字の間にスペースを空けて間を調整したり、韓国語、中国語が話せる方にチェックしてもらったりもしました。
*Flowとは:現場の業務をロボットに任せて自動化する仕組みです。 自然言語の命令を順に並べていくだけで、ノーコードで自動化プログラムが出来上がります。 周囲の安全確認など人が目視で判断する必要があるタイミングでは、一時停止して人による操作を要求することも可能です。
Q. ugoへの要望やリクエストがあればお願いします。
カスタマーサポートには満足しています。導入してから大きなトラブルや不具合はないのですが、こちらからの問い合わせに対する対応も早く、助かっています。今後は運用上のアドバイスや新しい業務を始める際のサポートなどを期待したいです。
機能的な面では、AIとの連携を期待しています。例えば、ugo社とアジラ社との業務提携*の発表がありましたが、ugoに警備向けAIが実装されれば、立哨においては人間と同じ役割が任せられます。また、生成AIとの連携による案内・コンシェルジュ業務の自動化にも期待しています。
Q. 最後に今後の展望があればお聞かせください。
弊社は「訪れる人も、働く人も、笑顔になれる世界でいちばん居心地のいい空港」をビジョンとして掲げています。
子どもの頃を思い出してみてください。空港って何かワクワクする場所ではなかったでしょうか?飛行機をはじめ先進技術に触れられる場所でもあり、ロボットもその一つに数えられると思います。現状の保安業務での活用に加えて、イベントなどプロモーション用途にも使っていきたいと考えています。
2024年秋には第2期開業を迎え、旅客以外の空港に遊びに来る方々も利用できるエリアが広がります。そのエリアでも巡回や案内といった業務が必要になりますので、うまくugoを活用していきたいです。
インタビューにご協力くださった塘田様、ありがとうございました。
「人手不足を補うためにロボットを使えないかと思うけど、どうしたらいいのか?何に使えるのか?」とお悩みの皆様、ご参考になったでしょうか?
ugoを実際に導入するまでの詳細な流れ・運用してからの実態を、熊本国際空港様の事例を用いてご紹介するホワイトペーパーを公開しています。
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