羅針盤型デザインと、これから
GK京都さんが哲学として掲げている「羅針盤型デザイン」とはどのような内容か教えてください。

(麻田)今はVUCAの時代、2〜3年後すら見えづらく将来の予測が極めて困難で、クライアントの皆様も確固たる答えを持つことが難しい状況です。そのため、デザインを提案しても「これが正解!」と明確に選択しづらい時代です。だからこそ弊社が力を入れているのが、「羅針盤型デザイン」というアプローチです。
まず1つ目は「判断軸ごと提案すること」。仮説Aに対して真逆のZも示して、全体の俯瞰地図を見せながら「この方向ではないですか」と示します。最終判断はクライアントの皆様に委ねますが、そのための羅針盤を一緒に作るイメージです。
次が「フューチャーリアライゼーション」。設計がまだ固まっていない段階から、MRやVRやプロトタイプで早めに体験してもらいます。空間にロボットが置かれたらどう見えるのかを、プロジェクトの初期段階から風景として再現します。体験すると良し悪しの実感が伴い「こっちの方向性に行くぞ!」という組織のエネルギーが引き出されて、プロジェクトが一気に加速します。
そして3つ目が「フューチャーアクティベーション」。提案して終わりではなく、無事に上市されるまでのサポート、例えばクライアントの専門外のモノづくりの際は設計や生産を請け負えるパートナー探しや品質管理の方法まで、上市以降も販売状況を見守りながらプロモーションのアドバイスや新たな販路の開拓など、私たちのネットワークを使って伴走します。
これが羅針盤型デザインです。
(小沼)ビジョンをしっかり持っているugo社さんのような会社であっても、最適なデザインを作り出すのはかなり困難なことだと思います。我々は常にugo社さんがもつビジョンを忘れず、その方向性で最適なデザイン案を提示し続けています。初期提案からリアルなCGをお見せしたり、動いているロボットの動画を作成したりすることで、開発初期段階でも「最終の姿」をイメージしていただき、より正確なジャッジをしていただけるようにしています。
「人手不足の解消」という社会課題に取り組むugo社のロボットをデザインするにあたり、デザイナーとして社会的な責任や使命感を感じた部分はありましたか?
使命と言うと大袈裟ですが、デザインに課せられた役割は、ロボットを仲間や相棒と思える存在になるようにデザインすることだと思います。そのために、ロボットはシンプルでありながら、微細な部分にまでさりげない心配りがなされた、日本的な作り込みの「妙」が必要であると考えています。外観や表情、所作、音に至るまで、相手を想いつつも、相手に意識させない作り込みこそが、人や社会への自然な融合に繋がると思っています。その作り込みが成功すれば、やがて日本ならではのデザインとして認知され、文化として定着していくと思います。まさに、人・社会とロボットの「融合の接点」を全力できめ細かくデザインし「日本のフィジカルAI、ここにあり」という形を作りたいと思っています。
デザイナーとして最も期待していること・見てみたいシーンはどんな場面ですか?
違和感なく人と協働している姿です。仕事仲間として、相棒として認められ、名前を付けられたり可愛がられたりしている姿も見てみたいです。ugo Novaが当たり前の存在になり、文化として定着していく風景を夢見ています。
ugoと共に、次のステップで挑戦してみたいデザインの方向性があれば教えてください。
少し抽象的な表現ですが、日本的な精神性を持ったものとして世界に発信していきたいです。シンプルだけれど、ものすごく緻密に考えられ、作り込まれているプロダクトとして、世界に存在感を出していきたい。GK京都の方針としても、今後特にロボットやフィジカルAIは力を入れて取り組みたい領域です。プロダクトデザインのみでなく、ロボットとのコミュニケーションの在り方や、サービスのUI/UXなども切り分けずに、統合的にデザインしていきたいと思っています。また、新たな機会創出のためのリサーチや、先行的な仮説づくり・開発も一緒にしていきたいと思っています。
コミュニケーションデザインとロボットのデザインはニアリーイコールです。人とロボットがどういうインタラクション、どういう会話をするか、接点までもデザインしていく必要があると考えています。
最後に、ugo Novaを使ってくださる方々と、ugoロボットのファン・未来のユーザーに向けて、デザイナーからのメッセージをいただけますか?
(小沼)私たちがデザインしているのは、ロボットの外側だけではありません。人がロボットとどう出会い、どう距離を縮め、どう一緒に働くのか。その「接点」そのものをデザインしているつもりです。
日本には、目立たないところにまで心を配る、作り込みの文化があります。その精神をヒューマノイドロボットに宿すことができれば、それはきっと世界の中でも独自の存在になると信じています。「日本のフィジカルAI、ここにあり」と胸を張って言える一台にしたいです。…ですが、難しいことは抜きにして、まずは「なんかいいな」「ちょっと可愛いな」と思っていただけたら本望です!
まだ道半ばですが、街で、工場で、オフィスでこの子を見かけたら、ぜひ気軽に声をかけてみてください。その一言から、人とロボットの新しい関係が始まっていくのだと思っています。

(小林)はじめは、「なにかいる!?」みたいな形で受け止められたりもすると思うのですが、時間と共に、徐々にそこにいることが当たり前になって、気軽に挨拶を交わすような存在になっていってもらえたらすごく嬉しいです。自然に人と協働できる存在を目指して、メンバー全員で頑張っていきたいと思います。
(麻田)ugo Novaが日本を引っ張っていってほしいという想いで、全力で取り組ませていただきます!
人とともに働く「相棒」を目指し、これからも進化を続けるugo Nova。デザインに込めた思いや開発の舞台裏をお話しいただいたGK京都の皆さま、ありがとうございました。
