親しみと先進性が同居する次世代機へ
ugo Novaのデザインを手がけたGK京都に聞く

GK京都デザインチーム

次世代の汎用セミヒューマノイドロボット「ugo Nova」のプロダクトデザインを手がけたのは、プロダクトからUXまで幅広い領域を扱う総合デザイン事務所・GK京都です。

GK京都は、デザインの力でクライアントや社会の課題に対して進むべき方向を指し示す羅針盤となれるデザインファームです。デザインマネジメントを強みとし、プロダクトからブランディング、環境、UX/UIにいたるまで、コンサルティングから実装まで、伴走型サービスを提供します。

現行ugoの愛嬌や親しみやすさを受け継ぎながら、次世代機にふさわしい先進性と、仕事を任せられる信頼感をどう形にするか。GK京都のデザインディレクター・小沼健太郎さんら(以下敬称略)に、デザインコンセプト「Next Soft Precision」に込めた思いや、ugoらしさを守りながら進化させるための試行錯誤、そして人とロボットのこれからについて伺いました。

小沼 健太郎

株式会社GK京都 第2デザイン部 デザインディレクター。2009年の入社以来17年にわたり、デザイナー、デザインディレクターとして携帯電話をはじめとする電子機器、IoTデバイス等のデザインを手がける。2020年より5年半、アメリカ・アトランタのGK Design International Inc.にてシニアデザイナーとして様々なプロダクトの開発に携わる。ここ10年ほどは主にマリン系プロダクト、水上バイクや船外機のデザインを担当。

“私はデザインをするとき、常に「最終地点」を想像しています。自分がつくる製品を使う人、使う場所、どう使うか、何を感じるか、その大きさ、色、触り心地まで。その想像の確度が高ければ高いほど、良いデザインになると肌で感じています。そのために、PCモニターの中だけで完結させず、常に1/1のサイズ感を確認しながらデザインすることを心がけています。最近ではMR(Mixed Reality)を使用し、作成した3Dデータを1/1のサイズで確認をしながらデザインすることも多くあります。
1/1のサイズ感を持つと、正しい形というものが見えてきやすいためです。その確認作業をしないと、プロジェクトの終盤に「Rが大きすぎる」とか「面がフラットすぎる」など様々な見落としが起きる可能性がありますので、エラーをプロジェクト初期になるべく無くすために、1/1サイズで見るということを心がけています。”


10年越しの再会から始まった

ugo社との出会いを教えてください。どのような経緯でこのプロジェクトに参加されることになったのでしょうか?

(小沼)ugo社さんとの出会いといいますか、私がCEOの松井さんと初めてお会いしたのは、10年ほど前かと思います。松井さんが当時立ち上げていた会社で制作していたIoT玩具について、京都の伝統工芸とのコラボレーションを支援させていただき、当時は、時間を忘れてものづくりを楽しんでいた記憶があります。今回、10年以上の時を経て、松井さんから弊社にお声がけいただき、プロジェクトに参加することになりました。松井さんは今も当時も変わりなく。あれから10年が経ち立場が変わっても、ものづくりに挑戦する姿勢や人柄が変わっておらず、とても嬉しく感じました。

今回のデザインプロジェクトが始まった際、ugo社からはどのようなオーダーが伝えられたのでしょうか?

現行のugoロボットの資産を活かしつつ、新世代としての進化を求められました。あわせて「人と協業する」「社会や生活に融合する」という理念を表現するような、親和性のあるデザインを求められました。また、外観意匠のみならず、在り方やUI/UXなど、総合的なデザインパートナーとして、これからのugo社に伴走してほしいというお話をいただきました。

このようなオーダーは一般的でしょうか?

基本的にはどんなお客様でも、ビジョンや目指すべき方向性について事前にヒアリングを行い、それを体現・作り出すためにどうすればいいか?ということを一緒に考えていくというプロセスがあります。そういう意味では今回のプロジェクトも一般的な進め方ではあるのですが、ugo社さんの商品に対する想いは特に強く感じ、国産のヒューマノイドロボットを作っていくという背景やビジョンに対し、非常に共感しました。デザインは、お客様の想いの方向性を理解できていないとアウトプットが変わってしまいます。その点をしっかりと伝えていただいたので、スムーズにデザインを進めることができました。

最初にugo社のロボットを見たときの印象は?

最初にugoロボットを見たときの印象は、「可愛らしい」ということでした。十数年前にヒューマノイドロボットのデザインに携わって以降、ヒューマノイドロボットには大きな関心を持ち、たくさんのデザインを見てきましたが、ugoロボットは特に可愛らしく、愛嬌を感じるデザインだと思いました。文化の差もあるのかもしれませんが、日本人の私からすると、海外で生まれたロボットの「可愛さ」には、少し馴染みにくさを覚えることもあります。その点、ugoロボットは素直に「可愛らしい」と感じました。「日本人は人の感情を読みたいときに目を見る。海外では口を見る」などと言われていたりもしますが、ugoロボットは目がとても印象的だと感じています。

依頼を受けて、率直にどう思われましたか?

もちろん、すぐにやりたいと思いました。フィジカルAIへの関心がとても強いこともありますが、十数年ぶりに、松井さんとまた違うカタチでお仕事ができるということに好奇心が抑えられない!という感じです。断る理由がないと。

「これだけは絶対に守ってほしい」と言われたこと、逆にデザイナーに委ねられた部分は?

デザインに関しては、先ほど申し上げたugoロボットがもつ「愛嬌、かわいらしさ」の継承です。それはつまり、人の警戒心を解き、人の近くに存在できるロボットにするということ。その親和性に「先進性・進化感」を融合させることが求められており、それをどう表現するかが私たちに委ねられている部分です。当然、ugo社のみなさんと会話を重ねながら、様々な要件と向き合い、何度もデザインを更新しながら進めてきました。

実際にugoが動いている現場はご覧になりましたか?

プロジェクトがキックオフした後の話ですが、実際に秋葉原で案内をしているugoロボットや、ugo本社で迎えてくれたugoロボットと触れ合う機会がありました。コンパクトなサイズ感、かわいらしい音声、腕の動きも相まって、画面上で見るよりもより強く愛嬌を感じました。この威圧感のなさ、自然に生活や社会に溶け込めそうな印象は継承すべきだと強く感じました。

工場内で働くugoロボットは実際の現場では見ておりませんが、工場内の搬送機器や産業機器などのデザインにも携わっていますので、工場特有の条件や環境の厳しさはよく知っています。ユースケースを理解した上で安全性という観点でもプロダクトを磨いていき、いかなる環境下でも幅広くお使いいただきやすいというのも、デザインするうえでは大事なポイントかなと思います。


何を守り、何を変えるか

ugo社からのオーダーをどのように解釈されましたか?

適度な先進性を持たせつつ「現行ugoロボットのもつ愛嬌は失ってはならない」と考えました。例えば、昔仲良くしていた親戚のお兄ちゃんに久しぶりに会って、見た目は少し変わったけれど、中身は変わらず優しい。そんな人間性のような部分は継承していきたいと思っています。一方で、最先端のプロダクトとしての佇まいや、信頼性を可視化したような精緻なディテールは追加していきたいと考えています。

具体的には、現行モデルのどの部分を継承したのでしょうか?

印象を決定づけるのは顔です。目や頭のカタチは現行のugoロボットをなるべく変えないようにしています。実はプロジェクト終盤に、頭の上にセンサーが取り付けられることとなり、顔や頭の形状を変える必要が生じました。頭を大きくしたり、縦長にしたりも検討しましたが、最終的にセンサー部のみをヘッドセット型に独立させたデザインとすることで、顔や頭の形状を変えずに、印象の変化を極力抑えました。このプロジェクトは今後も続きますので、さらに洗練されたデザインにしていく予定です。

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